この話の結論(3つだけ)
- AIに読ませた中身は「クラウド」に届く
ローカル(自分のPC)に置いても、AIが読んだ瞬間に外(Anthropicのサーバー)へ送られる。だから顧客情報は“そもそも読ませない”設計にする
- 読ませていい場所を「フォルダで分ける」
Claudeが触れるのは決めた「作業フォルダ」だけにする。顧客情報はそのフォルダに入れない
- プランと設定で「学習に使われない」状態にしておく
設定 → プライバシー →「AIモデルの改善にご協力ください」をオフにする(後述の確認手順へ)
CHAPTER 1
大前提:AIに渡した中身は「どこ」へ行く?
Claude Code はあなたのPCの中で動きます。でも、その頭脳(AI本体)はネットの向こう=Anthropic(アンソロピック/Claudeを作っている会社)のサーバーにあります。だから、AIに読ませた内容は、答えを作るためにそのサーバーへ送られて処理されるのが基本です。
| 道具の種類 | 処理する場所 | 中身は外に出る? |
ブラウザ完結ツール (例:画像形式の変換ツール) | あなたのPCの中だけ | 出ない(アップロードなし) |
Claude Code (AIに読ませる作業) | AI本体はネットの向こう | 読ませた内容はそこへ送られる |
よくある誤解 — ここが一番大事「ローカルのフォルダに置いてAIに読ませれば、外に出ない」→ これは誤りです。ローカルに置いても、AIがそれを読んで回答した瞬間に、中身はクラウドへ送られます(AI本体があなたのPCではなくネットの向こうで動いているため)。ローカルにする利点は「渡す範囲を自分で選べる」ことであって、送り先が変わるわけではありません。
※唯一の例外は、PCの中だけで動く自前のAI(完全オフライン)を使うとき。Claudeはこれに当てはまりません。
たとえるなら:郵便と手元のメモ手元のノート(ローカル)に書いてあっても、それを封筒に入れて相談相手(AI)に送れば、中身は相手に届きます。ノートが自分の家にあること自体は、送った中身が相手に渡る事実を変えません。だから「送ってはいけないもの(顧客情報・パスワード)は、そもそも封筒に入れない」が正解です。
CHAPTER 2
学習に使われる? 保存される? — プランと設定で決まる
「クラウドに送られる」と、「AIの学習に使われる」「長く保存される」は別の話です。ここはあなたのプランと設定で変わります。
| プランの種類 | 学習に使われる? | 保存期間の目安 |
商用 (API/Team/Enterprise) | 原則 使われない | 標準 約30日。 条件を満たせば「ゼロ保存(ZDR)」契約も可 |
消費者向け (無料/Pro/Max) | 初期設定のまま=使われる 設定オフ=使われない | 学習オン=最長5年 学習オフ=約30日 |
全プラン共通の例外Anthropicの安全の仕組みが「問題あり」と判断した会話は、あなたの設定に関わらず、確認のため一定期間保存・利用されることがあります。だからこそ、そもそも危ないもの(顧客情報・機密)は送らないのが基本です。
自分の状態を確認する2ステップ
STEP 1プランを確認(設定 → 請求/アカウント)。
「Pro」「Max」「無料」=消費者向け/「Team」「Enterprise」=商用。
STEP 2学習オフを確認(設定 → プライバシー →「AIモデルの改善にご協力ください」)。
ここをオフ(灰色)にすると、あなたのやり取りは学習に使われず、保存も短くなります。
数字は変わりやすい保存日数などの条件は改定されます(消費者向けの扱いは2025年8月末に変更されました)。厳密に扱うときは、必ず公式のプライバシー設定・契約で最新を確認してください。プランごとの詳しい選び方は教材「
Claudeの契約とアカウントの選び方」へ。
CHAPTER 3
2つのつなぎ方 —「コネクタ」と「ローカル同期」
Claude/Claude Code に Googleドライブを読ませる道は、大きく2つ。仕組みが別物なので、ここを分けて理解します。
| つなぎ方 | どういう仕組み | 読める範囲 |
コネクタ (MCP=備え付け連携) | Googleでログインして1回つなぐと、以降は「これ読んで」で使える | 連携したアカウントが見えるドライブ“全体”。フォルダ単位には絞れない |
ローカル同期 (Drive for Desktop) | ドライブのファイルをPCに同期し、Claude Codeがそのファイルを読む | Claude Codeの「作業フォルダ」で絞れる(指定した場所だけ) |
MCP(コネクタ)=壁の備え付け家電コネクタは「壁に設置済みの電子レンジ」のようなもの。
1回つなげば、あとは頼むだけ。ただし
そのアカウントで見えるドライブは丸ごと対象になります(詳しくは教材「
コマンド地図」のMCPの項)。
コネクタの落とし穴標準のGoogleドライブ・コネクタは「そのアカウントが見えるドライブ全体」が対象で、「このフォルダだけ」には絞れません。だから、顧客情報がたくさん入ったアカウントをそのままつなぐのは危険。絞りたいなら、次章の①(専用アカウント)で“アカウント側”を絞るのが筋です。
CHAPTER 4
特定のフォルダだけ読ませる — 4つの方法と選び方
「決めたフォルダ以外は絶対に見せたくない」を叶える手立ては、主に4つ。確実さの順に並べます。
| 方法 | 中身 | “他を見せない”確実さ |
① Claude専用の Googleアカウント | Claude用に別アカウントを用意し、そのフォルダだけを共有する。連携アカウントは他が見えないので物理的に絞れる | ◎ 一番堅い |
| ② 手動でファイルだけ渡す | 読ませたいファイルを1つずつ人が選んで渡す(アップロード等)。自動では同期されない | ◎ 確実・シンプル |
③ ローカル同期+ 作業フォルダを限定 | ドライブをPCに同期し、Claude Codeの作業フォルダをそのフォルダに限定する | ○ 手軽(指定ミスに注意) |
| ④ 絞ったMCPサーバー | 公開するフォルダ・権限を自分で設計した連携を用意する | ○〜◎(技術者向け) |
どれを選ぶ?(判断の早見)
顧客情報が絡む「絶対に他を見せたくない」→ ① 専用アカウント か ② 手動で渡す
自分だけ・手早く機密は元々入れない前提で軽く使う → ③ 作業フォルダを限定
技術者がいる連携そのものを設計して絞りたい → ④ 絞ったMCP
Driveの中で要約ドライブ内でAI(Gemini)に読ませたい → Driveの「プロジェクト」機能でフォルダを絞って渡す(最上位を丸ごとは精度が落ちる)
③を選ぶときの注意作業フォルダの指定を広く取りすぎると、他のフォルダも読めてしまいます。「顧客情報のフォルダを含まない、専用の作業フォルダ」を1つ決めて、そこだけを指定してください。標準コネクタ(全体が見える)とは違い、ここは自分で範囲を決められるのが利点であり、責任でもあります。
CHAPTER 5
顧客情報を扱う仕事の“鉄則”
どのつなぎ方・どの方法でも、読ませた中身はクラウドで処理される(CHAPTER 1)。だから、顧客情報を扱う会社の原則はシンプルです。
- お客様の個人情報・パスワードは、最初から読ませない設計にする(=“入れない”が一番確実)。
- データ(CSVなど)を分析させたいときは、個人が特定できる列(氏名・住所・電話番号など)を消す/伏せてから渡す(=仮名化)。分析だけなら「地域」「件数」「日付」で十分なことが多い。
- APIキー・パスワードなどの秘密は
.env という箱に入れ、AIに読ませない設定(deny)で封印する(→ 教材「AIの記憶と第二の脳のつくり方」のセキュリティの章)。
たとえ:金庫と掲示板秘密(顧客情報・鍵)=金庫。中身は見せず、必要なら「金庫の中の“あれ”を使って」と名前で指示する。ただの設定(モード・地域名など)=掲示板。これはAIに自由に見せてOK。この2つを分けておくと、安心して仕事をAIに任せられます。
CHAPTER 6
結局どうすればいい?(チェックリスト)
迷ったら、上から順にこれだけ確認すれば大丈夫です。
- 設定 → プライバシー →「AIモデルの改善にご協力ください」をオフにする
- Claudeに読ませる「作業フォルダ」を1つ決める(顧客情報を含まない場所)
- 顧客情報・パスワードは、その作業フォルダに入れない
- もっと固めたい業務は、Claude専用のGoogleアカウントに“そのフォルダだけ”共有する
- 迷ったら合言葉:「これはお客様の個人情報か?」→ はい、なら読ませない
人に説明するときの3行(そのまま使える)
- Claudeが触れるフォルダを分け、顧客情報はそのフォルダに入れない運用にします。=AIに「見せる箱」と「見せない箱」を分ける、ということ。
- さらに固めるなら、Claude専用のGoogleアカウントに“作業フォルダだけ”共有します。=そのアカウントには他が見えないので、物理的にそこしか読めなくなる。
- 大前提として、AIに読ませた内容はクラウドで処理されるので、お客様情報は最初から読ませない設計にします。=ローカルに置いても送られる。だから“入れない”のが一番確実、という理由。
APPENDIX
用語ミニ辞典
- コネクタ / MCPエム・シー・ピー
- AIと外部サービス(ドライブ・Gmail等)を“備え付け”でつなぐ仕組み。1回ログインでつなげば、あとは頼むだけ。ただし「連携したアカウントが見える範囲」全体が対象。
- ローカルlocal
- あなたのPCの中、という意味。Google Drive for Desktop を入れると、ドライブのファイルがPC内に同期され、Claude Codeがそれを読める。
- 作業フォルダworking directory
- Claude Codeが「許可なしで読み書きしていい」と決めた場所。ここを絞ると、AIが触れる範囲を限定できる。
- ZDR(ゼロデータ保存)Zero Data Retention
- 商用契約で申請できる、応答後に内容をサーバーに残さない仕組み。消費者向けプラン(無料/Pro/Max)では使えない。
- 仮名化かめいか
- 氏名・住所などの「誰か分かる情報」を消す/別の記号に置き換えること。分析だけしたいときに、個人を特定できない形にして渡す。