まず結論:作り直しは「頼み方」で決まる
※「要件定義」=何を・どこまで・どうなったら完成か、を先に言葉で決めること。設計図なしに「いい感じの家を建てて」と頼んでも、思った家は建ちません。AIも同じです。
作らせる前に決める「3つのこと」
大きめの仕組みを作らせる前に、5〜10分でこの3つをAIに伝える(一緒に決める)だけで、結果が大きく変わります。
① 運用イメージ ― 完成後、私の毎日はどう変わる?
一番大事で、一番忘れられがちなのがこれ。「この仕組みができたら、自分の日々の手作業・運用はどう変わるのか」を先にAIと一緒に描きます。使われ方が具体的だと、AIは「じゃあ何が必要か」を正しく逆算できます。
○ 問い合わせが来たら、今は毎回メールを開いて手で転記している。これが自動でLINEに通知が来て、返信案まで下書きされている状態にしたい
② 完成ライン ― 「これができたら完成」を3〜5個
「終わり」を先に決めます。箇条書きで3〜5個で十分。
例:「①フォームの入力を受け取れる ②候補を3件以上出せる ③選んだ結果が残る」
これがないと、AIはどこまでやれば終わりかを自分で解釈して、延々と作り込んだり、中途半端で止まったりします。終わりの線を引くのは、AIではなくあなたの仕事です。
③ やらないこと ― 今回の「範囲外」を先に宣言
「見当違いに走る」の最大の原因がこれ。範囲を閉じておかないと、AIは良かれと思って周辺までどんどん広げます。
例:「今回はログイン機能は無し」「決済は無し」「〇〇との連携は後回し」「デザインは後で整えるので今は最低限」
先に「外の線」を引くと、AIは余計な方向に膨らみません。"やらないこと"を1つでも書いた仕組みは、作り直しが目に見えて減ります。
なぜ、この3つで作り直しが減るのか
AIが迷走するのは、たいてい2本の線が引かれていないから。3つのことは、この線をあなたが先に引く作業です。
| 決めること | 引く線 | 抜けると起きること |
|---|---|---|
| ① 運用イメージ | 方向 の線 | そもそも見当違いのものが出来る |
| ② 完成ライン | 終わり の線 | 作り込みすぎ/中途半端で完成宣言 |
| ③ やらないこと | 外 の線 | 余計な機能まで広げて複雑化・迷走 |
コピペで使える「頼み方」テンプレ
大きめの仕組みを作らせる前に、これを埋めてAIに渡すだけでOKです。
これから【 】という仕組みを作りたいです。 いきなり作り始めず、まず下の3点を一緒に固めてから着手してください。 ① 運用イメージ:この仕組みができたら、私の毎日の手作業・運用はどう変わる? (今こうしている → こうなる、を具体的に一緒に描いて) ② 完成ライン:「これができたら完成」を3〜5個の箇条書きで先に決めて ③ やらないこと:今回の範囲外(作らなくていい機能)を先に宣言して この3つに私がOKを出してから、作り始めてください。
ポイントは「いきなり作り始めないで」と最初に言うこと。AIはすぐ手を動かしたがるので、先に3点を確認させるだけで暴走を防げます。
「要件定義1枚を渡したら、AIが寝ている間に全部作った」——こういう派手なデモの正体は、AIの魔法ではなく、最初に渡した"よく整理された1枚の要件定義"の方です。あの手のデモはたいてい小さくシンプルな題材で、完成ラインが最初から明確。つまり上の「3つのこと」を丁寧にやった結果でしかありません。魔法を探すより、頼み方を磨く。それが一番の近道です。
用語ミニ辞典
- 要件定義ようけんていぎ
- 作る前に「何を・どこまで・どうなったら完成か」を言葉で決めること。仕組みづくりの主導権は、コードではなくここにある。
- スコープ=範囲
- 今回どこまで作るか、の範囲。「やること」と「やらないこと」の両方を先に決めると、AIが余計に広げず迷走しない。
- 完成ライン(受け入れ条件)
- 「これができていれば完成」と言える具体的な状態のこと。3〜5個の箇条書きで先に決めておく。
まとめ
AIに仕組みを作らせて失敗するのは、AIの能力ではなく頼み方(要件定義)の問題。作らせる前に3つを決める——① 運用イメージ(方向)② 完成ライン(終わり)③ やらないこと(外)。「いきなり作らないで、まず3点を固めて」と最初に言うだけで、作り直しは激減します。
この教材の元ネタ(もっと詳しく)
- curriculum/00_考え方/AIに仕組みを作らせるコツ_作らせる前に決める3つのこと.md
- (関連)curriculum/00_考え方/AI導入が失敗する理由.md